人財マネジメントの動向と当社ビジョン
人財マネジメントに影響を及ぼす、近年の環境変化について説明します。
1つ目が企業の変化です。経営産業省が発表した「2025年の壁」にあるように、デジタル化の潮流によって既存事業がシュリンクしていく中、新たなイノベーションを推進する人財づくりが企業の経営課題になっています。
もう1つの環境変化は働き手の「働くこと」に対する価値観の変化です。ミレニアル世代やZ世代は給与や昇進で会社を選ぶのではなく、社会貢献や自己実現を重視して会社を選ぶ傾向が顕著です。
こうした環境変化を踏まえ、企業のイノベーションと働き手の自己実現を両立させるWin-Winの関係をいかに構築するかが、日本の企業にとって非常に重要な経営課題であると捉えています。そのためには人財価値の最大化が必要です。人財価値の最大化を達成するポイントは2つあります。
1つ目が、ビジョン・ミッション・バリューによる企業の存在意義の定義です。企業の存在意義を明確に定義し、従業員の共感を得て、高いモチベーションで仕事に取り組むことができる環境を作ることがポイントです。
もう1つは、働き手のやりたいことや特性を加味して、最大限のパフォーマンスを発揮できる場を企業が構築することです。
NTTデータ社内取組事例のご紹介
私たちNTTデータが社内で実際に行った取り組みと、そこから得た知見や経験をご紹介します。
対象とした組織は、当社の新規事業を創発しマネタイズすることをミッションとする組織で、アイディアの量が全く足りていないことが課題でした。そこで新規事業のアイディアの量を増やすことを短期目標に設定しました。
この組織では2、3年前から新規ビジネスのアイディアを出すための様々な取り組みを重ねてきましたが、アイディアの量はなかなか増えず、新規事業創発への距離が縮まらない状況でした。
メンバーへのインタビューや管理職のディスカッションから、原因と思われる点が2つ浮かび上がってきました。
1つ目は、必要とされる人財や能力の前段となる業務の定義が曖昧であったことです。業務定義の前段である戦略、さらにその前段となるビジョン・ミッション・バリューの設定も建て付けが甘かったという反省もありました。
2つ目は、感覚的な判断に基づいてジョブアサインメントを進めていたことです。
これらの課題に対し、ビジョン・ミッション・バリューの定義と浸透という側面においては、メンバーを巻き込んだ概要設計を行いました。ビジョン・ミッション・バリューは定義すれば良い、というものではなく、いかにメンバーに浸透させていくかが重要です。そこで、検討の過程においてもメンバーに参画を促し、自分ごととして捉えてもらえるように配慮しました。
もう1つが管理職による詳細設計という取り組みです。メンバーの意見を踏まえながら、組織戦略を達成するための意思入れや、メンバーの行動指針をしっかり言語化することを実施しました。加えて、管理職の振る舞いがメンバーの行動変容に大きな影響を与えるため、管理職の行動指針も作成しました。
能力定義に関しては、これまでスキルや知識という観点をもとに、感覚的にジョブアサインを進めていました。しかし、イノベーション創発のような仕事にはどうしても向き不向きがあります。そこで「資質」に着目したデータの可視化を行い、育成や配置に活用する取り組みを試行しています。
事例詳細 ー資質データの活用ー
資質データに関する取り組みと活用の具体例について、なぜ資質が重要なのか、取り組みを通じて得た私たちなりの理解をご紹介します。
資質は、人、文化、プロセスに波及していくものです。まず人に関しては、人の資質(原動力)、例えばどんな人間か、どんな興味を持っているかなどを理解し可視化することによって、人を行動させその価値を発揮させることができる、と考えています。
そして、組織は人と人によって形成され、期間を積み重ねることで文化を生み出します。したがって、今いる人財がどんな強みを持っているのか等を相互に理解することで、組織を強化できると考えています。可視化を通じて、組織として目指すビジョン・ミッション・バリューというマクロな目標に対して、ボトムの部分で自分たちはどのように活動していけばいいのかを考えます。こうした上下からのアプローチによって、組織のパフォーマンスと個人のパフォーマンスをより高めることが可能です。
実際にどのような事を行っているのか、その一端をお見せします。上図のチャートが個人の資質データです。学習スタイル、行動特性、仕事への興味などいくつかのパラメータで整理、可視化を行っています。可視化というとスコアのように思われるかもしれませんが、これはスコアではなく、特性を特徴や偏り方などで整理したものです。
このデータをもとに、自分たちの組織ではどのような人がパフォーマンスを発揮しているのかなどの整理を行い、マッチングを行います。ギャップがある部分に対しては、上司部下の関係性の中で育成を図ったり、それでも足りない部分は採用で補ったり、社内の異動で補充を試みたりなど、さらなる施策を打ちます。人財要件定義から採用・探索、配置、育成、評価、リテンションといったプロセスに対して施策を検討して実施していきます。
先ほどの事例の新規事業創発チームでは組織人財のハイパフォーマーモデルの設計を行っています。
新規事業を作る事業部であるため、何もないところから新しい何かを生み出すメンバーと、具体的なビジネスに落とし込むメンバーの2つの属性に分類し、思考・行動の特性と資質について可視化を行っています。
可視化されたデータをもとにセグメンテーションを行い、どのような人財がいて、どう配置しチーミングすればいいか、どのような支援を行えば成果につながるか、といったサポートを行っています。
DX組織・人財開発オファリングのご紹介
まとめとして、今回の事例から得られる勘所は、上図の黄色い部分です。
1つ目は、人財はコストではなく投資であるため、選択と集中によって見込みの高い領域に投入する必要がある、ということです。人財育成やトレーニングを場当たり的に行うのでなく、その前段であるビジョン・ミッション・バリューをしっかり打ち立てることが非常に重要です。
2つ目は、人財の資質の重要性です。育成・配置に取り組む際は知識・スキルだけではなく、人財の資質という要素に着目してジョブマッチングをかけることが非常に重要です。
こうした勘所を含め、私どもではビジョン・ミッション・バリューの定義から、戦略、設計、人財育成、ビジョン・ミッション・バリューの社内への浸透という意味での文化づくり、そしてそれらを運用していくための仕組み作りなど、包括的にご支援しています。
社外のお客様に対しても、DXの組織・人財開発のオファリングの提供に積極的に取り組んでまいります。
お客様とお話をさせていただくと、「最近チームメンバーに元気がない」「人財教育がなかなか成果につながらない」「せっかく人財を獲得したのにすぐ辞めてしまう」などのご相談を受けます。推測ではありますが、個別・単発の施策にとどまっていることが原因ではないかと思います。
その前段となる、ビジョン・ミッション・バリュー、戦略策定、あるいは人財の資質に着目した仕掛けを作ることでこれらの課題が解決できると考えます。
NTTデータではデジタルサクセス®タレントトランスフォーメーションというブランドを掲げ、NTTデータでの実際の経験、乗り越えてきたノウハウに基づき、DXの観点から組織・人財づくりの課題解決をご支援するサービスを提供しています。
その一環として、Digital Talent Communityというクローズドコミュニティを設置し、その中で継続的に、情報提供、意見交換、情報交換を行なっています。ご興味のある方はぜひこのコミュニティにご参加ください。