自動車業界に限らず製造業全般を考える時、お客様はOMO(Online Merged with Offline)、すなわちオンラインとオフラインを行き来しながら自分にぴったりのモノを探すのが当たり前になっています。お客様はオンラインで情報を探し、店舗に来て実際のものを見ながら検討されるわけなので、「オンラインでお客様は何を検討されているか」、「自社とどんな付き合いがあるか」などをデータ化して、それを店舗に渡してあげる、逆にリアルな店舗でのアクションをオンライン側に返していける、そういう仕組みづくりが必要です。こうした高度な顧客データ活用が、競争力を保つためには必要です。
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NTT DATA Next Gen Future vol.7
顧客データ活用DXのよくある障壁と対応事例
DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進には、データリテラシー、先進テクノロジー活用、ビジネスドメイン理解など高度かつマルチな人材が必要とされます。 しかし、そのような人材を長期に安定して確保するのは難しいのが現状です。 自社ビジネスを深く理解したマルチスキル人材を育てつつ、限られた予算・スケジュールで成果を出すにはどうしたらよいのか?当社のサポート事例より、これまでのよくある障壁と対応事例をご紹介します。
このような方におすすめ
- ・顧客データ活用DXを推進中・検討中の方
- ・DXプロジェクトで現場部門との目的擦り合わせに課題のあるIT部門の方
- ・DX人材の育成・確保に課題をお持ちの方

株式会社NTTデータ 製造ITイノベーション事業本部 第一製造事業部 泊谷 達紀
2001年に株式会社NTTデータ入社。企業基幹業務システムの構築に従事した後、2015年より顧客接点・データ活用領域を担当。コンシューマ向けデジタルマーケティングやリアル店舗の販売業務デジタル化にAIを組み合わせた業務企画・システム構築・施策実行を顧客企業のITディレクターとして支援。
製造業・自動車業界トレンド OMO対応
顧客データ活用DXのよくある障壁事例
具体的な顧客データ活用の事例を通じて、どんな障壁があり、どういった判断ポイントがあるのかをご紹介します。
ここでは自動車業界、特にディーラーでのセールス活動を、顧客データを用いてサポートする例を取り上げます。
簡単な例で言いますと、どのくらいの自動車購入意向があるかをMLモデルでスコアリングし、それによって効率よく売り上げを伸ばしていくというアプローチです。
本日は皆様がご興味をお持ちの「スコアリング」をテーマに、障壁となる事例をご紹介したいと思います。
事例から学ぶ、よくある障壁と対応提言
自社の製品・サービスを購入したいと思っている購入期待度をスコアリングしたいと考えた時、検討プロセスがどのように進んでいくかを大まかにまとめたものが下のチャートです。
どこに具体的にどういった障壁があるか、どう対応していくべきかをご紹介します。
企画フェーズ
まずは企画段階ですが、「精度の高いモデルを作れるのだろうか」というのが最初の障壁です。機械学習モデルがどれだけビジネス貢献できるかは、実際やってみないと分からないものです。企画段階ではなかなか分からないので、ビジネス面での掘り下げができず、とりあえずシステムだけ作ります、ということになってしまいます。また効果が見通せないため企画が通らない、やってみたが成果が出ないのでPoC 止まりになってしまう、ということが起こりえます。
ここで障壁を越え、企画を何とか前に進めるためには、3つの方法が考えられます。
1.「システム化の前に手動運用を活用してアウトプットを評価すること」
最初からすべてをシステム化しようとすると投資額は非常に大きなものになってしまいます。最初に行うべきはモデルが有効なものかを判断することですので、モデルを実行する部分だけをシステム化し、環境を準備し、残りは極端に言ってしまえば、全部手作業で行う形でトライアルします。こうしたミニマム志向で投資を抑え、そのモデルを見てから投資をさらに広げていくという方法です。
2.「ヒトが上手くやれている判断・行動を当たり前にできるモノ・状況づくりを担保すること」
機械学習モデルを使おうとする時、AIにしかできないことを目指したくなりますが、まずは現場にいる優秀なセールスマンの方の見本となる行動や判断根拠に注目し、それらをデータや人以外のロジックに置き換えることができるのかをシミュレーションしてみます。少なくとも優秀なセールスマンの方が現場でやっていることをロジックにできるという見通しが持てれば、モデルとしても良い結果が期待できます。
3.見える化自体を効果として「今まで見られなかった●●●●が見えるようになった!」を入れておくこと
例えば自動車ですと、このお客様は何年サイクルで買い換えているとか、Web ではこんなコンテンツを見ていますとか、メーカーのキャンペーンにはこんな応募をしてこんな回答をしていますなど、今見ることができない情報を補足的に提供できること効果として挙げておきます。そうすれば、仮にモデルが役に立たない精度であったとしても可視化の部分で十分使えるという部分があれば、PoCから先に進むことができます。
要件検討フェーズ
続いて要件検討のフェーズの障壁ですが、ある程度モデルとして精度が出てきているのに、実際にビジネスの現場に持っていくと「これはちょっと使えない」と言われてしまうことがあります。どういうことかと言うと、スコアの結果が、現場の販売員の方が当たり前に知っている範囲を超えられなかったからです。例えばスコアが、車検やローンの満期が近いとか、ディーラーでよくお金を使ってくれるお客様の順位といった既存のデータと似たようなリストになっていたとすると、「それはもう知っている。新しさがないよね」ということになります。
こういう場合の対応策としては、現状はディーラーにあまり来ていないが買いそうですよとか、車検は近くないけれど買いそうですよとか、現場でノーケアなお客様をスコアリングしてあげると、現場に喜ばれるのではないかと思います。
今できていること、できていないことを把握し、できていない部分に対して何ができるかを検討しておくことが精度を上げるよりも重要になってきます。
モデルPoC/制度評価フェーズ
実際にモデルを作るとなると「別々のシステムにデータがあって、つなげられるかどうかが分からない」ということが起きます。また、いざ現実にやってみるとつながらないというのも、よくあるケースで、皆様もご苦労されているのではないかと思います。
この場合、データサイエンティストばかりに頼るのではなく、お客様のジャーニーの所在・内容・つながりなど、顧客データの全体像がわかる内製メンバーでデータ分析チームを編成しておくことで、理解が深まっていくのではないかと思います。
トライアル運用フェーズ
次はトライアル運用の部分です。「なぜスコアが高い・低いのか、要因に納得できず、ヒトがスコアを信用できない」。これは販売の方たちが、作ったモデルを信用してくれないというケースになります。
例えば、自分の抱えている既存のお客様がいつ買い換えてくれそうかをスコアリングしたとします。しかし販売の方はスコアの結果だけで次に誰にアプローチするかを決めるわけではありません。販売の方の独自判断は絶対残るものです。スコアは判断の手助けをするためのものですから、人が解釈できるような工夫が必要です。アルゴリズムで作ると、人には理解できないロジックがたくさん使われてしまいます。場合によっては解釈重視で、人が理由を理解できるモデルを採用するのが効果的です。
「ディーラーの現行運用や将来要望のズレ。ズレが抵抗の口実になる」。これはAIに限らず新しいものを導入する時に、昔からある障壁です。
デジタルの施策の場合は構想段階から関連する会社さんがトップのレベルですり合わせをして、号令をかけて成功事例まで一気に作ってしまうのが、望ましいです。販売会社が新しいやり方を取り入れてうまくやっているとなれば、他社さんも追随せざるを得なくなります。そのためには本社とディーラー現場間の特命チームを準備するなど、現場のヒアリングからもう一歩を超えたスケールに取り組み、やっていくことが必要かと思います
本番運用
最後に本番運用では「次々と最新の予測が来ても、現場は混乱する」というのがありますが、業務のサイクルと予測のサイクルをきちんとすり合わせることがポイントになってきます。
まとめ(事例からの提言)
1.ビジネス面の検討を企画・要件検討段階から可能な限り深堀する
どのフェーズにおける障壁も、最初に企画や要件検討の段階で、ビジネスの具体像を深掘りしながらデータやシステムの活用を考えていくことで減らすことができます。
企画や要件検討の部分が実態に沿ったものであれば、実際に作ったモデルを現場に適応していった時に、企画そのものをやり直すといったことにはならずに済むはずです。
2.ジャーニー全域の顧客データを扱う内製メンバーを育てる
自社のビジネス・データ・ITを理解したマルチスキルメンバーを育てる上で、カスタマージャーニー全域のユースケース×業務プロセス×データフローを如何に把握するかがポイントとなります。
そのためには、ジャーニー全域の顧客データを扱う内製メンバーを育成し、小規模なチームを中心として、自社のビジネス・データ・ITをつなげた把握が可能な状況を作ることが最も重要ではないかと考えています。
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