2030年、AIが企業の頭脳になる時代へ
近年、AIの進化と普及は非常に速いスピードで進んでおり、2030年頃にはAIが企業の「頭脳」として機能する世界が来るのではないかと考えています。コンサルティングサービスや大学研究室の予測でも、従来の情報システムの役割が変わり、AIそのものが企業活動の中核を担うようになると主張されています。
ただしすべてがAIに置き換わるわけではありません。会計や法令対応のように、高い正確性、信頼性、説明責任、透明性などが求められる領域など、AIでは置き換えられない領域が存在し続けるでしょう。
この前提のもと、私たちはAI活用を大きく4象限に分類して取り組んでいます。
①システムも人も必要な領域
②システムの人的作業を削減し効率化する領域
③システムが不要になって人の作業をAIが拡張する領域
④システムも人も不要でAIが自律的に価値を創出していく領域
私たちはこの4象限に対してそれぞれサービスを提供しています。
特に④の領域では、これまで人が担ってきた判断をAIでどのように支援・高度化できるかが重要なテーマとなります。私たちはこの課題に対し、新しい技術を取り込みながらブレイクスルーを目指しています。

まずシステム開発の領域では、「AI Shoring」を展開しています。これは設計書を入力すると、“日本品質”のソースコードとテストが自動生成される仕組みです。従来のAIツールが人のサポートに留まっていたのに対し、より自動化を進めた点が特徴です。
マルチエージェント構成を採用し、計画、コード、テストといった役割を分担した複数のAIエージェントが相互に作業を監視することで品質の向上を図っています。また、NTTデータの開発・品質ノウハウを学習させることで、“日本的な”開発や品質の担保の仕方に対応しています。
実績としてはバックエンド開発に加えて、最近ではバージョンアップやマイグレーションといった領域にも適用が進んでいます。

運用領域では、「Shared-ITSM」というサービスを提供しています。AIを徹底活用することでコスト削減をお約束して、システム運用をお任せいただくサービスです。
特徴としては、ベンダースイッチのコストをAIで最小化、運用コストを最適化、AIで作業を効率化しコストメリットを最大化するといった3つがあります。
ベンダスイッチコストの最小化に関するAI取り組みとしては、「設計書リバース」があり、既存のソースコードから設計書を自動生成する技術です。設計書が不十分な環境ではベンダースイッチに初期コストや手間がかかってしまいますが、設計書リバースを使うことで効率的に運用引き継ぎが可能になります。
またシェアード体制により、作業量に応じて柔軟にリソースを調整することで、コスト最適化を実現しています。アラート対応やインシデント対応などにもAIを適用し、非定型業務においても高い精度で対応可能になっています。

「GRAG AI」-AI主体の新価値創出
本日の本論となるのが、象限④の「AIが人の力を介することなく、判断や新しい価値を創出していく」エリアです。
まず重要な問いかけとして、私たちはAIの下した判断をすべて信じることができるでしょうか。私たちは現状のAI(LLM)は効率化には貢献していますが、高度な意思決定や判断を任せるには限界があると考えます。LLMはインターネットや書籍といった公開データで学習しており、企業固有の知識を扱えないこと、そして説明責任が果たせないことが理由です。
強化学習やRAG(検索拡張生成)の導入は確かに高度化の有効な手法ではありますが、判断を任せられるレベルに持っていくのは難しいのが現状です。例えば「ECサイトが遅い原因」をLLM+RAGに問うと、一般的な原因の羅列になってしまいます。一方、人間は因果関係をたどりながら最適な解決策を導き出します。
ではAIが因果関係を理解してそれを説明してくれるようになれば、もっとAIに仕事を任せられるのではないかということで、開発したのが「GRAG AI」というサービスです。人とAIが共に進化する、オントロジー駆動の次世代知識基盤というコンセプトになっています。
中核技術であるGraphRAGは、情報間の関係性や因果構造をグラフとして表現し、AIがそれを理解できるようにするものです。これにより、「なぜその結論に至ったのか」を説明可能な形で提示でき、ハルシネーションの抑制にもつながります。

例えばシステム開発への活用例では、システム設計書の情報をGRAGに読み込ませ、設計書の情報を自動的にタグ付けして、システム内の要素間の因果関係を構造化しグラフを構築します。問い合わせを行うと、AIは単なる一般論ではなく、システム固有の構造を踏まえた回答を返します。例えばECサイトが遅い理由を尋ねると、特定のAPIやデータ構造に紐づいたボトルネックをピンポイントで特定するといったことがGRAG AIなら可能になります。

私たちはGRAG AIをすでにシステム開発領域に適用しており、これを実際にお客様の業務領域にも適用しようと取り組んでおります。
システム領域ではGRAG AIを使ってかなりの領域で開発が可能になっています。前に説明したAI Shoringには製造や単体試験を任せ、仕様を把握した熟練の有識者にお願いしたい試験や運用にGRAGを使っていくという住み分けで、システム開発作業の大部分をAI化することを狙っています。
設計レビューでは既にお客様と取り組みを始めております。有識者の観点をAIに学習させることで、整合性や影響範囲を自動で指摘できるようにしています。テストでも網羅性の高い試験項目を安定的に生成し、品質のばらつきを抑えています。また運用においても単なる監視に留まらず、高度な影響分析やトラブルシューティングへの適用を進めています。
並行してお客様領域への適用も進めており、ここでは単なる相関ではなく、ビジネス上の因果関係を理解することで理由が説明できることを、需要予測、予防保全、個別最適化といった領域で重点的に進めています。

GRAG AIは、お客様との実践を通じて常に進化を続けています。私たちはお客様と伴走しながら、新たなAI活用の実現に取り組んでいます。構想段階のご相談から具体的な活用の検討まで、ぜひお気軽にお声がけください。