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国産SAF普及促進に向けたNTTDATAの取組 - 欧州SAF有識者からの欧州市場のトレンドや課題を踏まえて - 受付終了
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NTT DATA Next Gen Future vol.52

国産SAF普及促進に向けたNTTDATAの取組 - 欧州SAF有識者からの欧州市場のトレンドや課題を踏まえて -

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経済産業省が目標として掲げている2030年 国内SAF供給の10%達成に向け、日本市場が2025年から、サファイアスカイエナジー等の国内プラント本格稼働を皮切りに、本格的に動き出します。 当社は先行する欧州市場における現実的な課題を調査しつつ、解決策を先行的に取り込むことで、国内SAF市場の早期立ち上がりと国際的な競争力の獲得にデジタルプラットフォームの側面から貢献していくことを進めています。 当社の取組及び欧州のSAF有識者を招いて欧州市場の最新動向をお伝えしながら、今後の国内SAF市場の創出に向けた、課題や取組方向性について議論をします。 Agenda No1 : NTTDATA’s SAF Initiatives in JP Market 20min No2 : Exploring Sustainable Aviation Fuel Trends in Europe 20min No3 : QA and Discussion 20min

このような方におすすめ

  • SAFの事業に従事している方
  • New Energyの国際トレンドや国内の取組に興味のある方
  • データ流通やデータスペース技術のユースケース創出に興味のある方

株式会社NTTデータ コンサルティング事業本部 コンサルティング事業部 政井 佑介

製造業で設計・生産技術・ITなどの幅広い業務を経験後、2021年にNTTデータ入社。 製造現場のデジタル化支援やGX推進を目的としたデジタルプラットフォームの企画・開発を様々な企業と連携し、推進している。

NTTDATA EMEAL DS&A, Green Transition & Sustainability Strategy Johanna Pérez Alvins

After working in energy, sustainability, climate change, and process design and improvement projects in America and Europe, she joined NTT Data in 2021. She is supporting global sustainability services business development at Inc. level and executing sustainability services commercial and delivery activities at EMEAL level.

株式会社NTTデータ 第二インダストリ統括事業本部 製薬・化学事業部 三井 英毅

NTTデータに入社以降、様々な業界のITサービスの企画・営業・プロジェクト立上等に従事する。 近年はエネルギー業界のアカウント責任者として石油元売り中心に多くのシステム・サービスの提供を進めると共に、業界横断的なプラットフォームの提供を社内外の関係者と連携し、推進している。

株式会社NTTデータ 第一インダストリ統括事業本部 自動車事業部 松枝 進介

2002年NTTデータ入社。様々な業界のITサービスの企画・開発に従事する。 近年は自動車業界においてGX推進を目的とした、協調領域としてのデジタルプラットフォームの企画・開発を国等と連携し、リードしている。

セミナーレポート

Introduction

松枝 進介

2025年、コスモのSAFFAIRE SKY ENERGYのSAF製造プラントが稼働を開始するなど、日本国内でもSAFの供給が開始されました。2030年に向けて需要が拡大する中、ENEOSや出光などの大手も生産開始の予定です。しかし、SAFの普及にはいくつかの課題が存在します。主な課題は、①十分な原料の確保、②連産品の販売先と製造コストの低減、③認証体制の整備です。

この分野で先行しているヨーロッパの市場について、その実例をJohannaさんから紹介していただきながら、SAFの普及に向けての議論を深めていきたいと思います。

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NTTデータの国産SAFへの取り組み

政井 佑介

SAF(Sustainable Aviation Fuel)は、バイオ燃料や合成燃料など非化石燃料由来の航空燃料で、既存のJet A-1燃料と混合して使うため「ドロップイン燃料」とも呼ばれます。ライフサイクル全体でCO₂排出量を最大80%削減できるとされ、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて重要な役割を担います。

SAFの原料には、てんぷら油などの廃食用油、廃プラスチック、非可食植物、トウモロコシやサトウキビなどの余剰作物、さらには水素とCO₂を合成した合成燃料などが含まれますが、特に2030年までは、廃食用油を原料とするSAFが主流になると予測されています。

日本が国産SAFを推進する理由ですが、化石燃料への依存度が83%、エネルギー自給率が11%、に達しており、さらに気候変動の影響も世界平均より大きく、脱炭素化が急務とされていることが背景にあります。そのなかでバイオ燃料・合成燃料はサーキュラーエコノミーの重要な要素であり、既存のエンジンや機器を活用できるため、水素や燃料電池などへの移行期の燃料としても有効です。特に航空・海運など電動化が難しい交通・輸送分野での活用が期待されています。

国産SAF生産を推進するためには、収集・生産・活用のサプライチェーンの整備が不可欠です。今後の需要に対して十分な原料の確保が必要となりますが、廃食用油の回収には全国の家庭や、140万件とも言われる飲食店からの収集が必要となり、輸送面などでのGHG排出も考えていかなければなりません。

またSAFの製造コストは従来燃料の2〜5倍と高く、航空会社だけでなく受益者全体で分担する仕組みが求められています。そのために「Book & Claim」という仕組みが必要になってくると考えています。これはGHG削減量をSAF燃料そのものとは別にクレジットとして取引するもので、購入した企業は自分たちのGHG削減量として報告できるようになるものです。

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見えない削減量を商業化するためには、客観的な第三者による国際的な持続可能性認証の取得が不可欠です。原料調達から最終利用までのトレーサビリティ確保が求められます。「CORSIA」や「ISCC」「RSB」などの認証機関が存在します。

NTTデータは、こうした背景を踏まえ、国産SAFの生産・販売に必要なデータ流通基盤および、カーボンクレジット取引基盤として食用油収集支援アプリ、Book & Claim取引基盤、トレーサビリティ管理システムなどを含む「SAFサポートプラットフォーム」を開発中です。

このプラットフォームは、愛知県やレボインターナショナルと連携し、地域密着型の実証実験を進めています。愛知県が制度設計を担い、レボ社がSAFの製造と原料回収を担当、NTTデータが排出量の計算や経済価値化を支援するという体制です。

※愛知県の脱炭素プロジェクトにて地産地消SAFサプライチェーン構築プロジェクトが採択 https://www.nttdata.com/global/ja/news/topics/2025/011500/

今後は、欧州の先行事例を参考にしながら、日本におけるSAFの社会実装を加速させていく方針です。

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欧州市場におけるSAF最新動向

欧州市場におけるSAF最新動向-背景

Johanna Pérez Alvins

空港におけるSAFの比率の目標値を設定するReFuelEU航空規則では、2025年に2% 2030年までに6%という目標を掲げています。2035年には20%、その後5年ごとに混合比率が高まり、2050年には70%に達する予定です。一方で合成SAF、合成燃料についても2040年に10%、そして15%、35%へと高まっていく計画です。つまり次の10年で需要が高まると同時に、新たな合成SAFの開発も求められていくことになります。

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欧州市場におけるSAF最新動向-政策・規制動向

欧州におけるSAF規制は、Fit for 55の枠組みの中に位置づけられています。Fit for 55は2030年までに温室効果ガスの排出を55%削減することを目指すものです。市場ベースの規制枠組みとしては、さきほど紹介したCORSIAやEU ETS制度などがあります。

こうしたEUの枠組みやCORSIAに準拠する上で鍵となるのは持続可能性認証基準で、ISCC、RSBという重要な基準があって多くの認証を発行しています。ユーロコントロールおよびECACでは、各国での規制措置の状況や加盟国の空港でのSAFの状況を示すインタラクティブなマップを作成しています。

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https://www.eurocontrol.int/article/sustainable-aviation-fuels-saf-europe-eurocontrol-and-ecac-cooperate-saf-map

政策・規制面での今後の展開として注目すべき点は2つあります。1つは2025年の5月から対応が始まったもので、ISCC、RSBのスタンダードに加えて、2023年に導入されたREDⅢ(Renewable Energy Directive Ⅲ)に基づく新たな持続可能性の要件が求められるということです。もう1つはReFuelEUについても新たな制度を検討中です。こちらには先ほど説明したBook and Claim方式を含むSAFの供給や購入の証明書の取引制度が含まれます。

欧州市場におけるSAF最新動向-マーケット動向

今後、世界的およびEU内でSAFに関してどのような資金調達や投資が求められるのか、その際のリスク除去の重要性について説明します。今、公的資金を投入して新たなインフラの開発、イノベーションの創出、研究開発が進められています。また新たな合成燃料関連の開発にも積極的に資金が投入されています。

EU内でのSAFの需給状況は ReFuelEU規制によって影響を受けます。SAFに関しては、先進的なバイオ燃料、合成燃料など様々な開発が行われているものの、現在のキャパシティ、生産能力、生産設備では、2025年の需要は満たすことができますが、2030年の需要には対応できません。そのため現在進行中のパイプラインプロジェクトを確実に実現することが求められています。EUのパイプラインプロジェクトは2030年まで25件があり、オランダ、フィンランド、スウェーデンに集中しています。25のプラントのうち15プラントでHEFA技術(廃食用油・獣脂・非・可食植物油などの脂肪酸エステルを水素化処理することでSAFを生産するもの)が使われており、SAFの86%は廃食用油から生産されることになります。したがって短期的にはSAFの供給課題は廃食用油の確保に直結します。

EUでは廃食用油は航空燃料だけでなく、その他のバイオ燃料の生産にも使用されています。したがって現在のEUでは十分な量の廃食用油を確保することはできていません。EU全体の商業セクターからの収集率は75%にとどまっています。現時点ではEU加盟国のうちわずか4か国のみが十分な廃食用油を収集できている状況です。

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現在、欧州は廃食用油の大部分をアジアから輸入しています。その輸入率は80%に達しています。SAFの生産コストは輸入コストが加わることで高くなってしまいますし、アジアからの輸送過程で温室効果ガスを排出してしまいます。

またSAFの価格動向ですが、従来の航空燃料と比べて現在は3倍から10倍の水準にあります。また原材料の価格変動もSAFの価格に影響を与えており、これらの課題がSAFの普及に大きな障壁となっています。しかし今後、規模の経済が確保され、市場が成熟し、インセンティブ提供などの措置を通じて、長期的には価格の低下が見込まれます。

欧州市場におけるSAF最新動向-運用・技術動向

ReFuelEU規則は2025年から発効されていますが、2025年から2035年までは移行期間と位置づけられています。今年からEUのSAFサプライチェーンは活性化します。

バリューチェーンが活性化することで2030年にはSAF生産が進展し、欧州における供給の60%はHEFA技術またはAlcohol to Jet(アルコールを原料としてジェット燃料に変換する技術)をベースとしたSAF になると予想されています。SAFには合成燃料やバイオベースの燃料など多様な生産経路があり、今後も様々な種類が加速度的に進展していくと見込まれています。しかし必要とされるSAFの需要を満たすためには、今後生産能力を拡大して行く必要があります。

認証体制にも課題があります。バリューチェーンに参画するすべてのプレーヤー間で情報共有ができるような情報システムの構築が必要です。EU規制のもとで確実な認証を担保するためには、持続可能性証明やプロセスの証明ができるようなシステムも必要です。

そしてリスクの検討もまた重要です。EU諸国の中には廃食用油の収集が全く進んでいないところもあります。そして大半は廃食用油を輸入しているため輸入元となる生産国における不正の懸念もあります。こうした状況により、認証体制や規制の厳格化が求められることになり、マーケットへの参入プレーヤーや供給業者が限定されることにもなりかねません。さらには最近起きている政策面での方向転換や方針転換は投資判断やオペレーション上のリスクとなります。

もちろんたくさんの機会も存在します。廃食用油市場の成熟、認証要件に対する理解、バリューチェーン全体のトレーサビリティを確保するための技術面の進歩により不正を防止し、持続可能性認証を担保できるなど、機会も増えています。

欧州市場におけるSAF最新動向-まとめ

政策・規制においては、今後も明確な政策や規制の基準が求められますし、SAFのプレミアム価格に対するインセンティブや、SAF生産のコスト低減への取り組みなども必要になってきます。

市場ダイナミクスの視点からも、継続したSAFの研究開発に対する投資は必要です。規制に基づく様々な生産方式についても引き続き投資が求められています。これらの投資を促進するには、収益保証の仕組みや、投資家が投資しやすい確実性を提供する必要があります。インフラ整備の継続も重要です。

運用や技術面では地域レベルのSAF供給戦略での連携が重要です。SAFの特性の透明性を高め、トレーサビリティを確保した形で提供することが求められます。また長期のSAF契約を結び、旅客や乗客の啓蒙を行うことも必要です。

ディスカッション

松枝「NTTデータの政井さん、そしてヨーロッパの事例に詳しいJohannaさんから、SAFの現状についてお話しいただきました。日本の石油業界に詳しい三井さんには、普段日本のオイルメーカーの方々と接する中で、SAFや新エネルギーに対する温度感や弊社に対する期待感をおうかがいしたいです」。

三井「脱化石の中心にいるオイルメーカーとしては新エネルギーへの温度感は非常に高いと感じています。既存の燃料事業でしっかり利益を出しつつ、その資金を使って中長期的に新エネルギーへ投資していくというのが基本方針です。

新エネルギーは選択肢が多くどれが主役になるか見えにくい状況で、SAFはヨーロッパでの事例が進んでいて、ビジネスやルール作りも具体化しているため、日本でも注目度が高まっています。オイルメーカーが飲食店などと連携して使用済み油を回収する取り組みを始めようとしていることから、SAFに関しては実証段階から実用化に向けた動きが加速しています。

ただし、従来のビジネスと比べると、SAFのビジネスプロセスはかなり複雑です。原料の回収、認証の取得、Book&Claimのような新しい仕組みなど全く違う流れになります。だからこそ、NTTデータのようなデジタルプラットフォームへの期待が非常に高いと感じています。国内でのSAF生産はまだ始まったばかり。ヨーロッパの先行事例から学び、それを日本のビジネスや仕組みにうまく取り込んでいくことが重要です」。

松枝「私たちとしても、ヨーロッパの先行的な取り組みを引き続きリサーチしながら、日本でのSAF市場の立ち上げをしっかり推進していきたいと考えています」。

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