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ヒューマンセンシングを起点とした新規サービス創出 受付終了
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ヒューマンセンシングを起点とした新規サービス創出

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フィットネストラッカーをはじめとするウェアラブルデバイスの普及が示唆するように、今後ヒトの生体や行動をセンシングするヒューマンセンシングの技術はますます進化を遂げていきます。  NTTデータが予想するヒューマンセンシングの進化の方向性や応用可能なビジシス領域について世の中の事例を交えご紹介し、先進技術起点で新規サービス創出をご支援するデジタルテクノロジーディレクター®の取り組みについてご紹介します。

このような方におすすめ

  • 新しいテクノロジーを起点とした中長期的なビジネス創出に興味のある方・ヒューマンセンシングをビジネスに取り入れたいと考えている方

株式会社NTTデータ  デザイン&テクノロジーコンサルティング事業本部 デジタルテクノロジー&データマネジメントユニット 太田 佳来

2013年にNTTデータに入社。プラットフォーム領域のエンジニアとしてオンプレ・クラウドの開発に従事した後、2019年より現職。近年はデジタルテクノロジーディレクター®として、センシングや生成AIなどの先進テクノロジーを活用したお客様企業との共創ビジネス創出やお客様ビジネスの価値向上に取り組んでいる。

セミナーレポート

ヒューマンセンシングとは

私が所属しているデジタルテクノロジーディレクターグループは、「DX推進をリードするDXの共創パートナー」としてNTTデータが蓄積している国内海外の豊富なケーススタディや最新の技術ナレッジを活用することで、お客様と共にデジタル トランスフォーメーションの共創に取り組んでいます。

今回ご紹介するヒューマンセンシングとは、人を計測 して得られたセンサーデータをもとに人の状態や行動を分析・推定することを指しています。

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2000年代の後半、NikeとAppleが小型センサーをランニングシューズに取り付けてランニングの時間、距離、ペースなどを測定できるようにしたNIKE +iPodという製品が発売され話題になりました。

通信技術や通信デバイスの発展に伴ってセンサーのデータを外部からリアルタイムに取り出して活用するというユースケースが現実的なものとなり、今日では様々なウェアラブルデバイスが市場に普及しています。今後も市場は拡大していくと予測されています。

このように人間をインターネットに接続する概念は、近年ではインターネット・オブ・ボディーズ、通称「IoB」という言葉で語られることがあります。インターネット・オブ・ビヘイビア、要するに振る舞いや行動のインターネットという意味で使われることもありますが、どちらも人の身体や行動に焦点を当てることでは共通しており、ハイパー・パーソナライゼーション、つまり顧客の行動データをリアルタイムで収集して顧客の要望やニーズに応じて製品やサービス、顧客体験をカスタマイズすることが実現できるようになると考えられています。

近年では国内の特許とグラントの実績からも、人間の行動や生体のデータをセンシングする研究に資金が投下されているということで、弊社でもヒューマンセンシングに着目をしています。

ヒューマンセンシングは今後2つの方向性で進化を遂げると予想しています。
1つは「取得データの多様化と精度の向上」です。
もう1つは「センシングのフリクションレス化」です。

まず「取得データの多様化と精度の向上」ですが、センサー・フュージョンという言葉を聞いたことのある方がいらっしゃるかもしれません。近年のセンシングでは複数のセンサーから集めた情報を機械学習アルゴリズムなどで処理することで、より高い次元の情報や精度の高いデータを得るといったことが行われています。

例えば先日発売されたGoogleのPixel Watch2では、心拍数、心拍変動、皮膚温などのデータを機械学習アルゴリズムで処理することで「ストレスの兆候」という新たなデータを得るということが行われています。また複数のセンサーを使って心拍数データの精度を向上させるといったことも行われています。

NuraLogix(ニューラロジックス)社というカナダの企業は、30秒間の自撮りのビデオからヘモグロビン濃度の推移を推論して、バイタルや メンタルなど人間の状態を測定する技術を実用化しています。

このようにセンサー・フュージョンやAIによる分析技術の進化によって、感情や精神状態といった人間の内面も含めて人間を多角的に高精度でセンシングする技術が今後も進化すると予想されます。

もう1つの「センシングのフリクションレス化」というのは、ユーザーにとって導入や使用の抵抗がないことを意味します。
経済的には、スマホに搭載されたセンサーを使うことでハードウェアの追加コストといったユーザーへの経済的負担はかからないということです。ユーザー体験のフリクションレス化では、設置型のセンサーの進化や非侵襲型センシングの実現などがあります。例えば、レーダーで人の動きを検出する技術を活用して睡眠の量と質を可視化する技術はすでに実用化されています。血糖値測定では従来、体に針を刺す必要がありましたが、非侵襲型のセンサーの開発がいくつかの企業によって進められています。

フリクションレス化が進むことで日常生活の中で継続的なセンシングが可能になり、将来的に未だ実現されていないデータの解析が可能になる機会も生まれると考えています。

ヒューマンセンシングの応用可能性

ヒューマンセンシングの応用可能性ですが、分野別には医療・ヘルスケアでの活用が進んでいます。
健康管理、遠隔医療に加え、今後は無自覚な病気兆候の発見などにも活用されていくと考えます。

次に流行すると予想しているのは、エンタメ・教育訓練の分野での活用です。感動体験を可視化して、本人にフィードバックしたり、イベントの演出に活用したり、メタバース空間に投影したりといった活用が考えられます。教育訓練では言語化しにくいベテラン熟練者のコツというようなものをデータ化してトレーニングに役立てるといった技術伝承・知識伝承の活用が考えられます。

社会課題解決の活用例としては、新型コロナウイルス接触確認アプリなどがあります。

用途としては人間のモニタリング、見守りを中心に活用が進んでいて、パーソナライズドサービスやプロダクトデザインでの活用も考えられます。

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ヒューマンセンシングを活用した事例を3つ紹介したいと思います。

1つ目は住友生命が提供するVitalityという生命保険です。こちらはウェアラブルデバイスやスマートフォンで取得した歩数や心拍数の情報をアップロードすることによって、保険料の割引などの特典を受けることができるものです。金銭的なメリットに目が行きがちですが、本質的には個人の健康増進に対する意識を変えて行動変容を促すという点が大きな価値になっているものと考えています。

2つ目はヤマハ発動機が開発した感情センシングアプリです。ライダーの身体に装着したベルト型センサーで心電データを計測し、感情推定技術を活用して分析して、ライダーが走っている時の感情をリアルタイムでスマートフォンに表示するものです。感動体験の可視化によるバイクライフの楽しさの増幅を目的にしているということで、まさにエンターテイメントでの活用の例と言えると思います。

3つ目は、NTTデータが提供する、介護スタッフによる高齢者の見守りをサポートするエルミーゴ®というサービスです。眠りSCANとシルエット見守りセンサーという2つのセンサーを活用して「覚醒・起き上がり・離床」を検知して、介護スタッフに通知するという機能を提供しています。
他人をモニタリングするためプライバシーへの配慮が求められますが、こちらでは録画をシルエット画像に留めることでプライバシーと機能性の両立をはかっています。


今後取得できるデータの多様化やセンシングのフリクションレス化が進むことで、さらに新たな応用例が見出されていくと考えています。

ヒューマンセンシングに取り組む上で考慮すべきポイント

ヒューマンセンシングを事業に取り入れるには、デバイスのコストを考慮したビジネスモデル設計、社会的受容性の壁など、乗り越えるべきハードルが高いということは否めません。

だからこそ数年先の未来を見据えて、中長期的な事業開発に見合うだけのインパクトや提供価値を生み出せるかを見定めていくことが特に重要となります。

そのために我々が実践する手順としては、
①「フォーサイトを描く」ということを行います。先進事例調査やテクノロジーリサーチを通じて、テクノロジートレンドを知り、社会や業界に起きる変化を予想します。
②次に「顧客への提供価値の再定義」として、自社の事業が顧客に提供する価値を、テクノロジーを用いてどのように変革できるか?を考えます。
③最後に「実装・効果創出」のフェーズとなりますが、ここではパートナリングが非常に重要となります。というのもヒューマンセンシングでは、センサーデバイスやデータの収集など実現すべき要素が多いため、1社で全てをまかなうことは難しく、外部のパートナーの力を借りるのが不可欠となります。

2つ目の「顧客への提供価値の再定義」は3つの考え方があると考えています。価値の「転換」、価値の「向上」、価値の「創出」です。

価値の「転換」というのは、自社が提供する既存サービスの主たる価値を、既に実用化されているセンサーを活用して転換するという考え方です。住友生命のVitalityがこれに当たるかと思います。

価値の「向上」ですが、こちらは既存サービスのカスタマージャーニーにヒューマンセンシングによる気づきを取り入れて顧客体験を変革する、という考え方です。ハイパー・パーソナライゼーションが該当すると思います。

価値の「創出」は、センシングを新たな価値を生む源泉に据えるという考え方になります。先ほど紹介したヤマハ発動機の感情センシングアプリがこれに該当すると思います。

上記の3つを比較すると、実装までに必要なアクティビティは大きく異なります。例えば価値の「創出」ではセンシングの研究開発やハードウェア開発が必要になる可能性があるため、実現のためのハードルは高くなります。
そのため実現可能性や必要な期間を踏まえて、どのアプローチで進めるかを決めておくことが望ましいと言えます。

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NTTデータの取り組み

NTTデータの取り組みとして、「新規サービス構想策定」と「ヘルスケア共創ラボ」をご紹介します。

「新規サービス構想策定」というのは、お客様のビジネスが生み出す価値やビジネスのアジリティを先進技術の活用によって変革する取り組みです。テクノロジーの活用に知見を持つ私たちが、ビジネスとテクノロジーの橋渡し役を担い、先進技術を活用して戦略の立案から実行まで伴走支援を行います。
適用する技術としては、ヒューマンセンシングをはじめ、最近ではメタバースのエンタープライズにおける活用、最近話題の生成AIなども取り扱っています。

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実際の事例として、ライオンとNTTデータが進めているビジネス共創の例をご紹介します。
ライオンとNTTデータは2022年1月よりデジタルトランスフォーメーションの推進に関する業務提携を行っていて、その活動の一環として口腔内センシングに着目したビジネス創発に挑戦をしています。この共創活動では、もしこんなデータが取れたらこんなことができるのではないか、というフォーサイト視点のアプローチで共創を進めております。

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もう1つの「ヘルスケア共創ラボ」のご紹介となりますが、当社は今期の中期経営計画において、「Realizing a Sustainable Future」というスローガンを掲げていて、お客様、パートナー企業様、生活者の皆様に実際に体感していただいて新たなビジネスを共創する場として「ヘルスケア共創ラボ」を2023年10月に東京・豊洲にオープンしました。健康の可視化、運動、睡眠、食という4つのテーマを体感していただけるコンテンツを用意しています。

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まとめ

本日はヒューマンセンシングの進化の方向性、ヒューマンセンシングの応用可能性、ヒューマンセンシングに取り組む上で考慮すべきポイントという3つの項目についてご説明しました。
さまざまな事例をご紹介いたしましたが、テクノロジーの活用の知見を活かし、ビジネスとテクノロジーの橋渡し役となってお客様の戦略の立案から実行まで伴走支援を行ってまいります。ご興味があればご相談いただければ幸いです。

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