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今こそ考えたい「サプライチェーンレジリエンス」の重要性~製造業編~ 受付終了
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NTT DATA Next Gen Future vol.19

今こそ考えたい「サプライチェーンレジリエンス」の重要性~製造業編~

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コロナ禍やウクライナ情勢など、サプライチェーン上に存在したリスクが次々と顕在化し、調達や生産・出荷に関わるトラブルが増大する近年、多くの企業がリスクや変化に強い“レジリエントなサプライチェーン”を構築する必要性に気づき始めているのではないでしょうか。 NTTデータグループでは、デジタル技術を活用し、変化の予兆を捉えた最適化シミュレーションと、その結果を踏まえたサプライチェーンを動的に組み替える仕組みの提供を通じ、より変化やリスクに強いサプライチェーンの構築に貢献しています。本講演では、こうした仕組みの基本的な考え方および、製造業における最新事例についてご紹介します。

このような方におすすめ

  • 食品・飲料・消費財・化学・素材業界の方

株式会社クニエ SCM/S & OPチーム 多田 和弘氏

大手素材メーカーの生産管理に従事したのち、独系ERPベンダーの計画系ツールコンサルタントを経て現在はクニエSCMに所属。プロセス系を始めとする製造業のグローバルサプライチェーン構築を中心に多くのコンサルティング経験を有する。

株式会社NTTデータ 製造ITイノベーション事業本部 SCM CoE 宮原 孝友

メーカ系ITベンダで製造業向けのERP・SCMのコンサルタントを経てNTTデータへ入社。製造業や流通業といったプロジェクトにSCM,S&OPのコンサルタントとして従事。顧客課題の深堀や構想策定といった上流から支援し、顧客のSCM改革を推進している。

セミナーレポート

サプライチェーンリスクに対する問題意識の高まり

株式会社クニエの多田と申します。本日はサプライチェーン強靭化とその必要性、そしてそのための施策についてお話しします。

まず、皆様深く実感されているかと思いますが、SCMに求められるものが大きく変化しております。従来は「Just in Time」、すなわちできるだけ効率的に、計画をきちんと立て実行するというサイクルを回すのがメインテーマでした。さらに現在では「Just in Case」、つまり予定していない、想像できない事態が起こった際に問題をできるだけ早く把握しお客様へのデリバリーに影響を与えないことがメインテーマになっています。

このような変化の背景には、サプライチェーン寸断のリスクを皆様が実務を通じて実感されていることがあります。経済産業省の通商白書を見てみますと、サプライチェーンのリスクとして、パンデミック、関税、貿易摩擦、さらには実際に起こっている原材料や部品調達のタイトさなどをあげる方が多くおられます。今は地政学的な問題も高まっているかと思います。

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レジリエンス獲得アプローチとデジタル施策

こうしたことを背景に、サプライチェーンの強靭化(レジエレンス)が求められる時代になってきています。われわれコンサルティングデリバリーとしても、何かが起きた時にリカバリーがすぐにとれる仕組み、さらにはサプライチェーンの寸断などのリスクが顕在化しないような、強靭なサプライチェーンを作っていくことにテーマが広がっています。

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サプライチェーンのレジリエンスを獲得していくには、サプライチェーン施設・設備の強化、拠点・ルート・在庫などの二重化、冗長化、輻輳化、さらには業務自動化・自律化・リモート環境整備、サプライチェーン参加者とのリアルタイム情報共有、BCPの整備や業務データのバックアップ、保険や契約などさまざまな施策があります。こうした施策を総合的に行っていく必要があるわけですが、物理的な強化策にはどうしても限界があり、デジタルによる施策であればリソースの制限をそれほど受けることなく相乗効果を生んでいけるのではないかと考えます。

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サプライチェーン強靭化デジタル施策

デジタル施策の1つ目は、リスクを考慮したサプライチェーン設計ないしは拠点配置です。各拠点をデジタルツイン化したうえで、そこで起こるさまざまなコスト発生要素をデジタルツインモデルの中に組み込み、それによってどのルートやどの組み合わせでものづくりをし、ものを運び、ものをストックすると一番コストが低いのかが分かるようになっています。これをリスクに置き換えることで、リスクの最も低いルートはどんな組み合わせなのかをシミュレーションできるようになり、リアルのサプライチェーンの組み換えや再配置を行うことができるようになると考えております。

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2つ目は、サプライチェーン参加者とのリアルタイム情報共有システムです。リスク事象が発生した時に最初に行うのが、サプライヤから物がいつ届くのかという情報の収集です。発生してから慌てて集め始めるではなく、あらかじめ需給の情報を常にやり取りできる仕組みや仕掛けを作って備えておく必要があります。リスクが顕在化しても、今どこにどの程度の在庫があるか、お客様はどのくらい物を欲しがっているのか、サプライヤはいつ、どの程度の量を出荷できるのかということを、よりビビッドにリアルタイムに把握できるようになります。

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このようなデジタル施策によってサプライチェーンの強靱化は実現できるわけですが、仕組みを実現するためのデジタル的なアプローチと事例について、NTTデータの宮原さんの方からお話しいただきます。

デジタル施策事例1 リスクを考慮したサプライチェーンのデザイン

NTTデータの宮原です。皆様の会社ではサプライチェーンに関するコストや時間が日々削減されていることと思います。また昨今の不確実性リスクや、ロシアのウクライナ侵攻や原材料の高騰といったことに日々悩まれておられるのではないでしょうか。

NTTデータは、不確実性、つまり起こるか起こらないか分からないリスクとして捉える時代は終わったと考えております。来年もしかしたら来月には事業を左右するようなリスクが顕在化する可能性があります。時代が変わるごとに、リスク対応やサプライチェーンを再設計することには限界が来ているのではないでしょうか。

そこで時代の変化に素早く対応し、サプライチェーンの強靭化を実現したデジタル施策の例を2つご紹介したいと思います。

最初にご紹介するお客様は、合併やM&Aを繰り返してきたことでムダやしがらみが多く、これを解消し競争力を強化したいと考えておられました。また自社グループ企業のリソースを有効活用し、他社への委託を最小限にしたいとも考えておられました。そこで私どもではグループ企業全体での改善に向けた第一歩としてサプライチェーンをデジタルで正確に捉えるとともに、物流ルートの決定において昨今の自然災害やリスクへの対応も踏まえて、時間やコストだけでなく、リスクも含めた最適なエンジンを搭載しました。

ポイントの1つ目は二重拠点とルートの評価が可能になったという点です。従来は人の経験や判断で行っておられましたが、人に依存しない仕組みで対応策を検討したいというご要望から、パラメータとして物流拠点やルートに対するリスクを数値評価しました。例えば物流拠点なら河川の氾濫地域に拠点や調達先がないか、納期遵守率はどうか、ルートの検討なら、豪雪による高速道路の通行止めや一般道路の立ち往生など、過去発生した災害の経験などの評価軸も加えて総合評価を行い、結果をグループ全体で共有できるようにしています。

リスク発生時には物流拠点のBCP在庫の引当情報などを共有することにより、在庫の取り合いや問い合わせ集中によるリスク対応の遅れを減少させ、グループ全体の持続可能性を高めています。

もう1つのポイントは最適ルートの算出が可能になったことです。ルート算出機能は従来、コストと時間が最小となるようにする考え方でしたが、ここにリスク評価値を含め、リスクが最小となるようにルート設計ができるようにしました。

コストが最小となるルートやリスクが最小となるルートなどをシミュレートできるようになったことで、事業環境に合わせた選択が迅速に行えるようになっております。これでルートを算出しますと、有用でない物量拠点が見えるようになり、ムダやしがらみがデータとして見えるようになりました。結果として、お客様側では既存の物流拠点の統合や廃止の検討や、コスト・時間・リスクが最小となる新たな場所への拠点配置というサプライチェーンのデザインにも取り組んでおられます。

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デジタル施策事例2 世界的リスクに対応した企業間情報の相互共有

最初の事例は、リスクが起きる前に備えるという事例でしたが、2つ目の事例はリスクが発生した場合のビジネス強化です。自社だけでなく、サプライヤも含めて企業間のサプライチェーンをエンド・トゥー・エンドでつないだ事例となります。

こちらのお客様は、タイの水害やグローバルな災害によって需給ひっ迫に悩んだ経験からサプライチェーンを最適化したいというニーズを持っておられました。そこに新型コロナウィルスの感染拡大で需給調整の問題も加わり、エクセルでのバケツリレーや電話やメールによる対応に限界を感じ、世界的なリスクに対して機動的に対応できるプラットフォームを構築したいと考えておられました。

目指すプラットフォームの姿は、自社、サプライヤ、顧客との間の情報をつなぎ、電話やメールに頼ることなく認識や判断ができるものでした。そこで各社の情報をご提供いただき、サプライチェーンの構成要素をデジタルで捉え、リスク発生時に不足する部材、影響のある顧客納期を迅速に把握できる仕組みを構築しました。

具体的には企業間を横断したサプライチェーンに有用なデータの収集・分析を担うプラットフォームと、サプライヤや顧客をつなぐコミュニケーションツールであるポータル機能、そして需給を可視化するダッシュボードを搭載した需給管理システムで構成されています。

とはいえ100を超えるサプライヤのすべての部材の把握は困難で、世界的なリスクに対してどのサプライヤがリスクに直面しているかの判断もまた困難でしたが、サプライヤを根気よく説得し、可視化用のAPIの提供やコード変換による共通言語化も行うなどして、出荷可能数や稼働状況をタイムラグなく共有することが可能になりました。そしてグローバルで発生したリスクに直面しているサプライヤを把握できるようになりました。

この結果、川上で発生したリスクに対して影響のある品目や顧客納期を検知し、対策を打つことが可能になりました。また需給管理システムによる需給アベイラビリティ機能によって予兆を把握し、対策を打つことも可能になりました。

今後、お客様はコストや契約情報も含め、企業間の最適なオペレーションを目指すとともに、今後起こるであろう物流の混乱や未知のリスクに対してもデジタルを活用したレジリエンス能力の向上を目指しておられます。

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まとめ

サプライチェーンのレジリエンス向上に対して、デジタル施策で取り組まれているお客様の事例をご紹介してきました。NTTデータグループでは、サプライチェーンの様々な課題に対してコンサルティングサービスとデジタルでの実行力のトータルでお客様のサプライチェーンの強靭化を支援させていただきます。

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