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CO2とコストのコラボレーション! ~旭化成の一歩差をつけるグリーン経営~ 受付終了
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NTT DATA Next Gen Future vol.18

CO2とコストのコラボレーション! ~旭化成の一歩差をつけるグリーン経営~

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旭化成株式会社では、機能樹脂製品を対象にGHG排出量をCO2量に換算して示すCFP(カーボンフットプリント)を算出する基盤『EPOCH』をNTTデータと共同で構築しました。この基盤は2020年度に構築した経営情報をグローバルで一貫把握する基盤と組み合わせることにより、利益拡大とCO2削減を両天秤にかけた施策立案を可能にしました。本セッションでは、旭化成より経営×グリーンの事例をご紹介すると共に、その実現のためのプログラムとなるNTTデータの構想策定からシステム導入・定着化の支援内容をご紹介します。

このような方におすすめ

  • 社内のグリーン活動推進に興味もしくは検討中の方
  • 経営層、DX推進部門の方

旭化成株式会社 モビリティ&インダストリアル事業本部 企画管理部 國田 航 氏

旭化成入社後、機能材料事業の事業企画として事業経営に携わってきた。ネイティブの英語力を駆使し、グローバルに跨る機能材料事業全体のDXをリードしつつ、プライベートでは新米パパとして奮闘中。

株式会社NTTデータ コンサルティング&ソリューション事業本部 コンサルティング事業部 ビジネスコンサルティング統括部 代田 真輝

製造業を中心に経営管理・SCM領域で大小さまざまなプロジェクトに従事。旭化成様の経営管理基盤を構築した経験から、GHG可視化基盤の構築をリードした。プライベートでは新婚として幸せを謳歌中。

セミナーレポート

旭化成の一歩差をつけるグリーン経営 【旭化成】

旭化成の國田と申します。本日はカーボンフットプリント(CFP)の可視化と一貫損益のシステムについてご説明します。本題に入る前に、旭化成グループと機能材料事業について簡単にご紹介いたします。弊社は1922年創業しまして今年で100周年を迎えました。弊社のビジネスは大きくマテリアル、住宅、ヘルスケアという3つの領域に分かれています。 

Slide1.jpg今回お話させていただくのは、3つの事業領域のうちマテリアル領域のにあるモビリティ&インダストリアル事業部の機能樹脂製品と総称される製品群です。機能樹脂製品は別名エンジニアプラスチックとも呼ばれるもので、主に自動車やOAの部品の材料として使われます。商流が長いことが特徴で、原料を購入してからお客様にお届けするまで半年かかるものもあります。またシンガポールで原料のポリマーを作り、それをタイランドに持っていってコンパウンドという加工のプロセスを行い、ヨーロッパで販売するというように、グローバル複数の拠点を経てお客様にお届けするという特徴もあります。

■カーボンフットプリント(CFP)可視化システム

CFP可視化システムは社内では「EPOCH」と呼んでおります。上流から自社を出るまでのCFP排出量を算出するものです。下流まではなかなか把握が難しいので、このとらえ方がデファクトとなっています。 

システムの特長としては、1つ目は、1万点を超える最終製品に対し、グローバルにまたがる製造プロセスごとに、詳細にCFPデータを積み上げて計算が可能ということ。2つ目の特長としては経営管理システムとの連携により、損益の情報とCFPの情報を組み合わせて分析が可能になっていることです。 

システムの機能は大きく2つです。1つ目の機能は、工場別のGHGモニタリング機能で、工場の実際の排出量を計算する機能。もう1つの機能が顧客サービス機能で、これは最終製品品目別にCFPを算出し、お客様に情報を開示するためのための機能となっております。 

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データの社内での活用事例ですが、システム導入前はエクセルで集計を行っており、年1回つまり年間データでのモニタリングしかできませんでした。しかも可視化できたのは工場別データのみで、GHG Scope1から2までという限定した情報でした。システム稼働後は月別のデータでモニタリングできるようになり、TableauというBIツールとの連携により分析・ビジュアル化が可能になり、工場別および最終製品別の可視化もできるようになりました。Scope1から3に対応しました。これにより今までできなかった月次報告でのCFP情報の分析や情報共有が行えるようになっています。 

■グローバル損益可視化システム

もう1つのグローバル損益可視化システムは社内では「JUMP」と呼ばれており、「グローバル一貫損益」と「プロジェクト期待収益管理」2つのステージに分かれています。 

ステージ1の「グローバル一貫損益」の可視化についてですが、従来は各会社での財務損益は把握できましたが、素材ごと製品ごとの財務損益を見ることは大変手間がかかりました。スクラッチシステムを用いて比例費計算を行い、ERPなどを用いて固定費の計算を行うといった具合に別々のシステムでコスト計算を行い、それらをエクセルによる手作業で集計しており、年に2回が限界でした。JUMPTableauによってデータの活用と分析が簡単に行えるようになり、月次あるいはリアルタイムでの各拠点の素材ごとの数値を把握することができるようになりました。 Slide2.jpg

次にステージ2プロジェクト期待収益管理ですが、これは弊社の中期経営計画における課題と対策に関連しております。 

例えば課題の1つに、現状と目標のGAPが大きいというものがありました。曖昧すぎて打ち手が目標達成に十分なのか判別できない目標が高すぎて現場のモチベーションにつながらないといった課題がありました。そこで対策として、成行のシミュレーションというものを行いました。外部のデータベースを使って現在の損益の延長線上でどこまで達成できるかをシミュレーションし、それによって目標との差が明確になって、地に足のついた議論ができるようになりました。 

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もう1つの課題として単なる積み上げではリスク定量化が困難というものがありました。手持ち案件を単純に積み上げると、中期経営計画は達成できそうに見えるのですが、リスクの部分はあまり定量化されていません。そこで対策として失注リスクを織り込んだ期待値を用いて見込みを立てることを行っています。具体的には新規案件情報CRMを用いることで現場の定常的なインプットをそのまま見込みに繋げています。これによって過度なストレッチを排除できますし、現場にとってマーケティング活動の効果が期待値として定量化されることで、今後の活動を行うインセンティブになっていると考えています。 

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最後にICPInternal Carbon Pricing)についてですが、これは社内で発生するGHG排出量を金額換算(CO2を削減するのに必要なコスト)した時の損益のことを指します。今後炭素税の導入が予測され、CFPを加味した損益管理や経営判断が今後必要になってくると考えております。このICPを使って今後期待値の高い、儲かる新規案件のプロジェクトにリソースを配分することが可能になりました 

Slide5.jpg旭化成のカーボンフットプリント(CFP)可視化グローバル損益可視化プロジェクト期待収益管理のご説明は以上となります。 

サステナDX実現の秘訣  【NTTデータ】

ここからはNTTデータの代田が、旭化成様のグローバル経営管理基盤やCFP算出基盤の構成、活用、推進を担当させていただいた立場から、CFP算出基盤の概要と成功ポイントについてお話しさせていただきます。 

■CO2排出量可視化の現状

近年、自動車業界を中心にサプライヤーに対し製品のCFPの提示を求める動きが加速しています。そして今後は製品別のCFPの評価や削減をサプライヤーに求めることが考えられます。今回ご支援させていただいた製品別のCFP算出基盤はこうした動きに対する取り組みということになります。 

■製品別CFP

製品別CFPの算出は、BOMBill Of Materials)と呼ばれる製品の構成比率を用いて行っています。製品によっては中間品を作ってからさらに加工して完成製品を作るため、BOMを複数回数用いながら原料を積み上げて最終製品のCFPを求めていきます。こうすることで製品ごとの特徴をとらえたより精緻なCFPを提示することが可能になっています Slide6.jpg

本システムは単に製品別CFPの可視化だけでなく、今後、製品別のCFPの評価・削減までをカバーする基盤であると位置づけています。 

最初のSTEP1ではCFPの可視化を行い、STEP2では削減箇所の明確化を実現します製品別CFPではプロセスごとに排出量を計算するため、どの工程で排出量が多くなっているかが可視化でき、見直すべき工程の判別が可能になります製造プロセスやサプライチェーンの見直しだけではなく、排出量の少ない製品を見きわめ、その製品の営業に注力することで会社としての排出量削減につなげることができます。さらにSTEP3では削減策の検討や意思決定のプロセスに入っていきます。ICPInternal Carbon Pricing)を活用し、今後導入の可能性が高い炭素税への対応として、具体的にはCO2の排出量をコストに見立て、コストバランスを見ながら削減策の検討から決定までつなぐことができると考えております。 

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CO2削減には設備投資などのコストが増えてしまうことが一般的ですが、CO2削減が求められる昨今の情勢も考慮し、CO2削減案に費用対効果があるのかを見定めながら施策・実行することが重要です。例えば製品別の収益額とCFPが分かれば、高利益・低排出の製品を見定めて事業戦略に組み込むことができます。また低利益・高排出の製品をどのように高利益・低排出に持っていけるか、製品事業単位で改善施策を検討できるかと思います。 

他にもCFPICPとしてコストに見立てることで、グリーンの視点を含んだグローバル連結の営業利益の管理を実現することで、「利益とサステナビリティ」の2つを兼ねた経営判断ができると考えております。  Slide8.jpg

■成功ポイント

今回のシステム構築の成功ポイントとしては、当時の情勢や旭化成様が抱える課題感を抽出し、すぐ実行に移してシステム構築に入っていったこと、そして今後の変化に対応すべく、機能改修の容易さや他システムとの連携に対して柔軟性のあるシステム構築していったことをあげることができます。 Slide9.jpg柔軟性のあるシステム構築の例として旭化成様でのスコープ遷移をご紹介します。 

今回のプロジェクト以前、旭化成様では各領域業務で担当の方がエクセルなどで個々の業務を回しておられました。そこでまずファイナンス領域でAnaplanというソリューションを導入し、スクラッチ機能の移管とともにグローバル連結損益の可視化と、ファイナンスとオペレーションの連携を実現できる経営管理に取り組みました。 

続いて新たな課題対応として、ファイナンスの領域では中期経営計画まで範囲を広げ、マーケティング領域に対してもSalesforceでの管理を実現しました。こうしてSalesforceAnaplanを連携して、営業状況まで踏まえた期待収益管理の実現まで達成できるようになりました。そしてマーケティングの領域を増やしていき、近年話題となっているサステナビリティの領域にまで即座に対応している、というのが現状です。 

過去にファイナンスの領域ができているからこそ、サステナビリティと経営情報の組み合わせもスムーズにできております。このように領域を広げられる基盤を担ぎ、少しずつスコープを増やしていったからこそ、新しい取り組みにもいち早く対応できていると考えております。 Slide10.jpg

まとめ

近年はトレンドがすぐ変わるため予測がたいへん困難な時代となっております。そんな変化に対してタイムリーに対応可能なシステムやプラットフォームを使いながら、まずはとにかくやってみる、実現に向けて動くことが重要だと考えております。何かひとつの領域でもよいので、まずは一緒に始める協力をさせていただければと思います。 

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