NTTデータ数理システムのプロフィール
NTTデータ数理システムが一貫して取り組んでいるのは数理科学という分野です。
少し馴染みがないかもしれませんが、簡単にご説明すると、AIの様々な事例の舞台裏で、数理最適化、シミュレーション、機械学習といった手法を用いて課題を解決しております。
ただ、お客様の抱えておられる課題がどの手法に対応するのか、という対応付けはなかなか難しい。数理最適化、シミュレーション、機械学習における、問題の独特な捉え方を知っておく必要があります。これら「捉え方」が分かれば、事例解決への勘が働くようになります。本セミナーでは数理最適化独特の捉え方について、具体的にご紹介します。
数理最適化による「捉え方」が意味すること
BIで集計や可視化を行って様々な問題を解決していくわけですが、例えばPOSデータから売上トレンドを見る場合には、データだけを眺めていても明らかになりません。購入時点を軸にという「捉え方」が必要です。
そんなのエクセルの関数でできるじゃないか、というお声がありそうです。確かにそうですが、関数は手段にすぎません。前提となる「捉え方」がないと売上トレンドは出てこないのです。
機械学習になると集計や可視化よりも少し分かりにくくなりますが、ここでも捉え方がベースになっています。例えば下図の場合、クラスタリングを使って顧客のセグメンテーションを行い、新商品をリリースする際にはセグメンテーションされた顧客の区分けと、商品の属性を掛け算することで、売上予測が出るはずだ、という捉え方を使っています。データから情報を取り出すためには、捉え方、つまり人間のインサイトが必要なのです。
シミュレーションも、仮想世界の人々の動きを独特の捉え方をするもの、と解釈できます。
SNSによる情報拡散と炎上のシミュレーションを行う際には、ネット上でのつながりをネットワークモデルで捉え、情報をばらまくという人間の行動をモデル化する。つまり独特な捉え方で人間を再現することになります。
また広告のレコメンドも施策と商品と顧客の相性によって反応確率が決まる、という捉え方に基づいています。
AI(数理最適化)による問題解決の例
さて、数理最適化にも独特の捉え方というのがあります。その中で代表的な「制約付き割り当て」というものを、人と企業のマッチングアプリを例に説明します。このアプリは求職者に対して企業をレコメンドするものです。
ある人がどの企業を好きかということを機械学習が当てている、具体的には反応確率という形でデータ化されているとします。機械学習でそこまでやっているのなら、わざわざ数理最適化を使う必要はないのではないか、と思われるかもしれません。しかし単に反応確率の高いところに順番にレコメンドすると、同じ広告料を払っているのに集中する企業と誰も来ない企業が出てきてしまいます。そのため、ここには何らかの制約を設定する必要があります。
「制約付き割り当て」という捉え方
この状況は、数理最適化ならではの独特の捉え方に直接当てはまります。具体的には「すべての人は3個の企業に対してお勧めする」「この企業はキャパシティがあまり大きくないのでやってくるのは2人以下にする」などの制約条件を設定します。その範囲で反応確率を最大化してレコメンドを決めています。そうすることで求人企業側の制約や人側の制約を満たした状態で、しかもそれぞれのマッチング度合いの合計が一番大きくなるように選び、どの求職者にも一定数以上でキャパを超えない相性の良い求人を紹介する自動マッチングシステムができあがるわけです。
「制約付き割り当て」は数理最適化に適した「捉え方」(数理モデル)
上図にある四角と丸の絵は、住民に対する公共サービスの割り当て、製薬業界であれば医師に対するMRの配置など、様々なシーンに適用できます。この「制約付き割り当て」の絵が描けたら、数理最適化をご検討ください。
こちらは配船の計画を立てた事例です。積み荷と船舶のマッチングと、どの経路を行くのかということを決めましたが、両方とも割り当ての構造をしています。制約付き割り当てを使うことでうまく解決でき、数億円のコストメリットを実現することができました。
数理最適化の結果の大部分は「捉え方(数理モデル)」で決まる
1つの問題で2つ以上の捉え方ができる場合も多くあります。数理最適化の結果の大部分は「捉え方(数理モデル)」次第。間違った捉え方をすると解けるものも解けなくなることもあります。これまで数理最適化を試してみてうまくいかなかった時も、それは捉え方に問題があった可能性をぜひご検討ください。
数理最適化で、今ここから始める新しいDX#1(自動化)
数理最適化がどのようにDX に役に立つのか、という話をする前に、数理最適化の最大のライバルの動向をお話しします。それは「人間」です。
人間はすごいです。データを全部見なくても、なんとなく高品質な計画を作ってしまいます。実際それで通用しています。
数理最適化が最初にやるべきことが自動化です。担当者がどんなデータを参考にしているかを紐解き、どんな制約が存在するかなどを聞き取り、人が何日も張り付きで行っていた仕事を軽減してあげるのが、数理最適化の最初のステップであり、使いどころの1つです。
とはいえそんなに簡単ではありません。なぜかというと、人間は大変手ごわいからです。
例えばデータがなくて、頭の中にしか存在しない、あるいは制約をつけたり、引っ込めたりする、さらに「うまく言えないんだけどちょっと違う」という曖昧な返答になるなど、対応が大変な面もあります。
しかし現場の方が苦労されているのは重々承知しておりますので、そのような部分を私たちがご支援できればと思っています。
数理最適化で、今ここから始める新しいDX#2(人間を超えるには・・)
DXというものは、人間を超える新しい物を作らなくてはいけない、そんな考え方をされている方もいらっしゃるかもしれません。
関連してちょっとしたエピソードをご紹介します。
生産計画のお話だったのですが、生産ラインが3つあり、それらに3つ製品を割り当てるのですが、そのうちの1つの製品が1つの生産ラインに収まらない状況でした。それはそもそも無理というものではないかとお答えすると、そういうときには仕方ないのでラインを洗浄して製品を切り替えるのだと教えてくださいました。ということは「洗浄を減らす」、と問題の前提を捉えなおして有効な答えをお出しすることができました。
事前
事後
ここでお伝えしたいのは、DXが人間を超えていくものであったとしても、そこには人間の助けが必要であり、人間の助けがあれば数理最適化は人間を超えられるのではないか、ということです。
おわりに
今、ここから始める新しいDX
・「制約付き割り当て」の絵が描けたら数理最適化モデルをご検討ください。
・数理最適化の結果の大部分は「捉え方(数理モデル)」で決まる。
・身の回りのデータを紐解きルールを聞き取り、人間頼みのタスクを肩代わり。
・人間の助けがあれば、数理最適化は人間を超えられる。